一年で一番緊張する日……?

  --不機嫌な王子--



「はい。俺のこと食べて。」

首にでかいリボンを着けた男が、朝会うなり変態発言してきた。
僕は本当に不気味に感じて、思わず後ろに下がってしまい、そして、この発言にはもっと深い意味があるのではないかと考えた。

「そんなに引かなくてもいーじゃんー。」
僕はこの男、山中侑士とかなりの距離をあけていたが、直ぐに真横に来た。


・・・・恥ずかしい。

侑士(何度も練習させられて、最近やっと慣れてきた)は、いるだけで注目される人間だから、朝の登下校という大勢の人に見られている中で、そんな男がリボンをして、さっきの発言だ。
みんな、すっごい見てる。

・・・・・・嫌だな。
僕は見られるのがとっても嫌いなのに。


「でもさ、本当に俺のこと食べていーよ。」

僕はどうやってこいつを食べればいいんだ。本当に訳分からない。


「まあ、これはジョークで・・・いや、80%は本気よ?あ、でもな、俺がミツのこと食べたいしな・・・・」
だから、食べる、食べられるって、意味分からないって。

「はい。こっちがホンモン。愛してるよん。」
そい言って、綺麗にラッピングされた四角い箱をもらった。



侑士を見たら、ニッコニコしている。


「なに、これ?」

「あれ?こんなベタな日にあげる物なんて一つに決まってんじゃん・・・・・つか、マジぼけ?」

今日。なんかあったっけ・・・・・

「俺なんて、ここくるまでに、もうこんなもらったんだけど。」
かなり大きめな袋の中を見せられて、その中には綺麗にラッピングされた物がたくさんあった。

「今日って、侑士の誕生日?」
その場合、俺もなんかあげなきゃいけないのかな。
つきあってるようだし。


「ん〜。今日って、一年の中で一番緊張する日じゃないのかな〜。男にとって。」

「つかさ、俺、この時期すげー好きなんだよね。色んなとこでフェアとかで売ってるじゃん?眺めてるだけで嬉しくなっちゃうんだよねー。デパ地下なんか行ったらさ、めっちゃ試食あるからさ、もー嬉しいのなんの。」

「しかも今年はさ、高級物が流行りらしくってさ、くれた中にも結構あってさ〜。やっぱさ、味が違うんだよね!」

「いやー、なんて楽しい日なんだろ!日本バンサイ!」


すごい。
なんか知らないけど、すごい嬉しそうだ。
そして何故、日本なんだ。


「ミツにあげたやつもさ、旨そうだったから後で一緒に食べようぜ。」

僕にくれたのに、侑士も食べるのか。中身は食べ物なのか。


そんなことを喋りながら、僕と会ってから校舎に入っている間にも、何人かの女の子から侑士はもらっていた。


なんだ?誕生日じゃないのか??



「よ。はよー」

「おー!」
「・・・おはよう。」
哲くんが挨拶をしながら現れたが、随分と疲れている。

「ゆーし、お前まったすげー貰ってんなー。」
「まーね♪もらっとかないと悪いじゃん?つか、お前まだ貰ってねーの?めずらしー。」
「いや、俺は今年は全部断ってる。」
「えー!!!もったいねー!!!!」
「・・・・・・俺は甘い物嫌いなんだよ。面倒だし。つっか、みっちゃんも貰ってんじゃん?ゆーし、ライバル現れたんか!?」
うんざり顔で哲くんは侑士の持っている袋を見ていたが、いきなり僕のほうに話がきた。

「これは俺があげたんだよ。ミツにあげる野郎なんか出てきやがったら、殺してるよ。」

「あーー。相変わらず重いこと。お前は気軽に愛を受け取ってんのにな〜。・・・そんな貰っといて、お返し大変じゃん。」
「あ〜、そんなんしねーよ。面倒くさい。」
「うっわ!かっわいそうだなー。酷い男。なー、みっちゃん?こんなたくさん愛貰っちゃってさ、すげー浮気男じゃん。」
「どこが浮気だ。俺はミツにしか愛を注いでないんだからな。ミツ、お返しはミツの体でいいからな。」




「・・・・ああ。今日って、バレンタインか!」


「・・・・・・・・え?・・・・・・・・・・・・おっそ!!!」

「・・・・・・・・な?聞いてた?お返しはミツの体で・・・・」


「だから、お返しが僕の体って、意味わかんないんだけど。」



「ぎゃー!みっちゃん超真面目顔!マジぼけかよー!!」
哲くん、僕は君の笑いのツボがわからない。





侑士から貰ったチョコは、大変美味しかった。
僕が2粒食べて、残り8粒は侑士が食べた。

そして暫くの間、侑士からチョコの匂いが漂っていた。

ちなみに、この日の夜に、チョコを2個もらった。
母と妹から。



僕は今年は、去年より1個多い、計3個のチョコを貰った。


お返しが面倒くさい。



「あ、僕2月14日って緊張したことないけど。バレンタインって僕と縁ないことだし。」

なんて言ったら、侑士は今日一番の笑顔を見せて抱きついてきた。



なんだ、こいつ。訳わかんないな。







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