不機嫌な王子 3

結局、俺は哲秋に誰を見ていたかを教えなかった。

「はあー。どの子だよ。お前を上の空にして不機嫌にさせてる奴は。」
「誰だっていいじゃねーかよ。」
「いや、よくねーよ。早くお前が機嫌直さないとこのクラスの雰囲気は暗いままなんだよ。」
あ?クラス?クラスの雰囲気暗かったのかよ。まあ、俺はクラスのムードメーカーだもんな。

「お前早くさ、そいつを落とすなり告るなり押し倒すなりしちまえよ。あれ?それとも押し倒されたいのか?」
「誰が押し倒されたいか!」
「まあ、どっちでもいいけどさ。早くやっちまえよ。まー、野郎だから今まで通りには行かねーだろうけど、お前の顔と話術で落とせるだろーが。」

・・・どっちでもいいって。
俺は押し倒す側なんだよ。




・・・・・・あ?押し倒す?
俺があいつを押し倒す・・・・・・・・
俺が押し倒したら、抵抗して手とかで俺を押しのけんだろうな。
で、俺はあいつの手首を頭の上で括って。シャツの前を開いてあいつの細い首と薄い胸が見えて。あいつの肌は白いだろう。外に出てなさそうだし。
眼には涙なんか溜めて。あいつは良い声で鳴くかな・・・・・・・・・。

やべー。やばい。すげーいい。
やばすぎる。
これで何杯でも白米食べれそうだ。


ん?なんで俺はあいつでこんな妄想してんだ?
あんな平凡で冴えない男のことなんか。


「おい!侑士!戻ってこい!」
「・・・・・・・あ?」
「お前!血!血出てる!」
「ち?」
「は・な・ぢ!!!!」


完璧な男・俺が、恥ずかしい男になってしまった。




はー恥ずかしい。白昼夢で鼻血を出すとは。
しかも男相手に。
男・・・・
あいつ・・・・・・

俺は携帯を取り出した。
やばい。あいつの顔見ただけでニヤニヤしてしまう。

俺は保健室のベッドの上であいつの顔をずっと見ていた。


「山中くん?鼻血治まったんなら授業に戻りなさいよ。」
「いやー、俺最近具合悪くてー、そのせいで鼻血も出たんすよ。」
「あら、そう。じゃあ、具合良くなったら授業出なさい。」
「ういーす。」
保健室のおばちゃんはカーテン越しに俺に話しかけてきたが、適当にあしらっておいた。
授業なんて出てられっかよ。



あー。
あいつを生で見たいな。
知りたい。
話したい。
抱きしめたい。




・・・・・・・・・・あ?抱きしめる?

????????



俺が寝ているベッドの横にある窓からは校庭が見える。
どこかのクラスが体育でサッカーをしている。
おーあいつ、邪魔そうだなー。同じチームの邪魔してんじゃねーか。とろいし、すぐボール取られるは、走んねーし。
あんなんいたら、一人いないでサッカーしたほうがよほど上手くできるよな。
あんなのは同じチームになりたくないね。



ん!?ん、ん、んー??!!?

あいつは、あいつじゃねーか!!! 俺が何日も考えてるあいつで、今朝も見たあいつで、鼻血の原因のあいつで、今持ってる携帯画面に写っているあいつじゃねーかよ!!

とろくて、かわいい。
すぐボール取られて、かわいい。
とぼとぼ歩いてて、かわいい。
髪なんか、朝よりボサボサになってる。
あ、足が見えてる。かわいい・・・・・

(この学校が夏はハーフパンツの体操着ということにこれほど感謝したことはない!!!)


キーンコーンカーンコーン


あ。授業終わったのか。
あいつのクラスの奴等がぞろぞろ校舎に入っていく。
体育委員らしき奴等が片づけをして。
あいつはクラスの奴等の一番後ろから、とぼとぼと歩いている。
一人で歩いている。


俺はいつのまにか走っていた。


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