不機嫌な王子 2

俺は最近気になる奴がいる。
今、俺の目の前で歩いている奴だ。
ヒョコヒョコと歩いていて、猫背で、リュックが1分に一度は肩からずり下がってその度に上げている。
髪は黒髪でボサボサで、制服はキチンと着ているようだが、どこかボテっとしている。
前髪なんてうざくないのか?と思うようなモサっと目にかかっているし、メガネもオシャレメガネとはかけ離れたようなものだ。
そんなあいつの姿を毎朝見るのが最近の俺の日課になっている。
遅刻常習犯だった俺が、この冴えない奴の姿を見るために朝早く起きて、駅で待ち伏せなんかしているんだ。


・・・・・ん?これじゃあ、俺、ストー・・・・・・。

いやいやいや、単純にあの冴えない人間を見たいだけなんだ。
断じて変態行為をしているわけではない。

・・・・・・・ん?傍から見たら変態こう・・・・・・。


いやいやいやいや、純粋な気持ちであの冴えない人間を見ていたいだけなんだ。
断じて邪な気持ちなんて無い。



・・・・・・・・・あ?邪な気持ちってなんだ?
俺はあいつに何かしたいのか?
あいつをずっと見ていたい。
見ていて全く飽きない。
けど、何故俺はあいつを見ていたいんだ・・・・。
見ていて心が洗われるような物でもないし、眼の保養になるような物でもない。
しかし、見ていたい。あいつが気になるんだ。
気になって気になって何も手につかない。
そして俺はついに昨日、あいつの顔を携帯で盗み撮りしてやった。
ずっとその写メを眺めてしまった。今朝だってそれをずっと見ながら電車ん中で揺られていた。

そんな、平凡、いや、平凡よりずっと下の野郎を俺は気になっている。


この、完璧な男が。


これが、俺が最近不機嫌な理由。
なぜ、この完璧な男の俺が、あの平凡な男を気にかけているのか。
そんな俺が、俺自身に対して腹立たしさを感じている。
あいつを見る度に、俺は腹立っていることを認識されて不機嫌になるが、あいつを見ないではいられない。
あいつを見れないとなると、余計不機嫌になる。



なんなんだ?俺は。

なんなんだ?あいつという存在は。



「おす!侑士。今日もはえーな。」
「・・おう。お前こそはえーじゃん。」
「俺は昨日出すもん出してスッキリしたから朝はさわやかお兄さんなんだよ。」

朝から下ネタかよ。
こいつ、哲秋も俺と同じくらいもてる。
哲秋は今流行りのキレイ系男子高校生。ジャ○ーズにいそうな感じの。
俺とセットでいると逆ナン率は倍になる。

「あ?お前さっきからどこ見てんの?俺様の美顔も見ねーで。」
そう。俺は今日、まだ哲秋の顔を見ていない。こいつの顔なんて見飽きてるから別に見る必要もない。それより、あいつを見ていたほうが格段に幸せだ。


・・・・・・あ?幸せ????


「?前方にいるのはウチの学生たち・・・・・ははーん♪分かったぞ〜♪♪」
「・・あ?何が?」
俺の視線はあいつにガッチリホールドされたまま哲秋に聞いた。
「お前、あん中に好きな子いんだろ?」





「・・・・・・・・・は!!!???!」
「いやー、追われてばっかのお前がやっと追う側になるとは。」
「・・・・・・・・・・へ?!追う??!」
「で?どの子?あのロングのストレート?それともゆるやかウエーブの子?もしやあの三つ編みの子!?」
「・・・・・・・・・・・・違う違う違う。そのどれでもねーよ。」
「てことは誰かを見てたのは肯定するわけだね。」
う。墓穴だ。
「で?どの子?」
「いや、別に追うとか、す・・好きとかじゃねーから。」
「・・お前、そんな言う割にどもってるし顔赤いじゃねーか。」
「いや、ホント、只気になってるだけだし。第一あいつ男だし。」
「え・・・・?男?そーか、そーか。お前相手が男だから気付いてねーだけで、そいつのこと好きなんだよ。」



相手が男だから気付いてないだけ?


そいつのこと好き?



「で、女にモテモテのお前を惚れさせた罪深い男の子はどの子だ?なーんか、後ろ姿だけじゃそれっぽいのいない感じだけど。あれは柔道部って感じだし、あれはデブ。あんな角刈り?チャラ男にギャル男…?それとも髪ボサ……。」



髪ボサ。
そうさ髪ボサボサさ。
顔は冴えないし、ぼやーとしてる。
いかにもオタクって感じさ。
俺とは無縁の人間だ。



「おい。本当にあん中にいんのか?カワイ子ちゃんは。」



カワイ子ちゃん。
あいつは全然カワイ子ちゃんじゃねー。
全くかけ離れている。




でも、俺にはカワイ子ちゃんに見える。




・・・・・・・・・・あ?


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